RoboCup SSL Rootsの回路を分析!【5:電源回路の分析 逆電圧保護回路】
こんにちは。ロボカップSSLに出場するチームRootsのと雷です。
チームではソフト開発を担当していますが、このブログでは回路班の新人としてがんばります。
今回から回路図の分析が始まります。 最初に分析するのは電源回路です。
目次:
Rootsのロボットとは
Rootsのロボットに限らず、ロボカップSSLに出場しているのはこんなロボットです。
直径180 mm、高さ150 mmの大きさで、
準優勝でした!!!
— と雷@技術書典応援祭 (@chmod_x_akasit) August 18, 2019
ここまで勝ち続けられるとは思っていなくてびっくりしましたが、Rootsは強くなっています!!!
応援してくれた皆さんありがとうございました!!!
そして、キーパー0番と、PKを決めた4番ありがとう!!!#roots_ssl pic.twitter.com/FIhRi9MRI8
オムニホイールで全方向に移動して、
MFTの会場でデバッグするロボカッパー#MFTokyo2019 #MFT2019#roots_ssl pic.twitter.com/JvP72JAYac
— と雷@技術書典応援祭 (@chmod_x_akasit) August 4, 2019
ゴルフボールをキックするサッカーロボットです。
ロボット ヨシ!!!#MFTokyo2019 #MFT2019#ssl_roots pic.twitter.com/W0ElI09uij
— と雷@技術書典応援祭 (@chmod_x_akasit) August 2, 2019
設計データはGitHubに公開しています。
回路分析の方針(再確認)
さて、Roots回路分析シリーズ の初回で回路分析の方針を決めました。 方針を改めて確認します。
- 公開している回路データを分析する
- Rootsのメンバーに質問しない
- Roots以外の人になったつもりで頑張る
- 最終的にオリジナル回路基板を作る
ここでのポイントは、オリジナル回路基板を作るということです。 回路基板を作るためには回路図データが必要です。 しかし、公開しているデータはEAGLEで設計されているため、KiCADユーザである私には扱いにくいです。
そこで、次のように回路分析を進めていきます。
- 公開している回路図をKiCADで作り直す
- 回路図データ
copy_roots_main.sch
ができる
- 回路図データ
- 公開しているパターン図をKiCADで作り直す
- パターン図データ
copy_roots_main.brd
ができる
- パターン図データ
- オリジナルの回路を設計する
my_roots_main.sch
とmy_roots_main.brd
ができる
Roots回路図のコピー品をKiCADで作ります。
ただコピーするのではなく、設計思想(作者の気持ち)を考えながら作業します。
電源回路の分析
それでは電源回路から始めましょう。
ブロック図と回路図
前の記事で作成したブロック図がこちらです。
コピーした回路図がこちらです。
各要素を見ていきましょう。
外部結線
電源回路にはバッテリーと、4ピンコネクタが接続され、15V、12V、5V、3.3Vの電圧が出力されます。 また、DIS_CHARGEという信号も出力されます。
バッテリー電圧は回路図に書かれていませんが、 Rootsの2017年の資料を見ると、メイン基板の電源定格は13V〜17Vと書かれています。
ロボカップSSLマシン用回路 メイン基板 · SSL-Roots/Roots_home Wiki · GitHub
4ピンコネクタにはトグルスイッチとプッシュスイッチが接続されます。 それぞれ電源スイッチと放電スイッチなのですが、 実際どんな形をしているのかは機械班のブログを見てください。
逆電圧保護回路
電源回路の中身を見ていきましょう。 入力段にはヒューズ(F201)とショットキーバリアダイオード(D201)で構成する逆電圧保護回路があります。
バッテリー逆接続時に、後段のIC(レギュレータ)より先にF201とD201に電流が流れるため、ICの破壊を防いでくれます。
IC内部には静電破壊防止ダイオードが実装されている(はずな)ので、逆接続時に静電破壊防止ダイオードを経由して大電流が流れ、ICが壊れます。
よって、IC内部のダイオードよりも早くONする(電流を流す)ために、 Vfの低いショットキーバリアダイオードを選定します。
F201について
F201の型番はSF-1206F700-2です。
データシートより、定格電流(Rated Current)が7A、定格電圧(Rated Voltage)が32Vです。 抵抗値は7.5 mΩです。 溶断電流については、
Fusing Time: Open within 1 min. at 200 % rated current
と書かれているので、定格電流の2倍(14A)を流すと1分後に遮断するようです。
D201について
D201の型番はCDBA340-HFです。
絶対最大定格のうち、平均順電流(IF)が3A、電圧(実効値)(V_RMS)が28Vです。 特性としてIFが3Aのときの順電圧(VF)が最大0.55Vです。
バッテリー電圧は最大17Vなので、通常使用時の定格電圧は問題ないですね。
バッテリー逆接続時はどうなるのか、パラメータの最大・最小値や温度変化等を考慮せず計算しました。
ヒューズが一瞬で溶断しそうな電流が流れます。 実際にはバッテリーの内部抵抗や回路パターンの抵抗等で制限されるので、1000Aも流すことはできないです。
・・・
ということはですよ。
ヒューズが溶断するかどうかはバッテリーの種類で決まるじゃないですか! いったいRootsはどんなバッテリーを使っているのでしょうか?(私は知ってるけど知らない)
Rootsが使ってるバッテリーは何?
Roots公式Twitterを見てみましょう。
今年の8月3日、4日に行われる Maker Faire Tokyoに今年も出展します!ロボカップ小型リーグの実機デモや操縦体験などの展示を行います。みなさん是非ご来場ください! #MFT2019 #MakerFaireTokyo pic.twitter.com/oXVYmfROFL
— Roots - RoboCup SSL (@roots_ssl) 2019年6月4日
テーブルの奥に青色の塊がありますね、、、おそらくLiPoバッテリーでしょう。
次に設計データを公開しているRoots_homeを調べます。 どこにも情報が無さそうに見えますが、、、、見つけました!
3D CAD Modelを開きます。
TURNIGY 20-30C DISCHARGE 1300mAh と書かれていますね!おそらくバッテリーの型番でしょう。 検索してみます。
でました! 3Dモデルにはセル数が書かれていないので出力電圧は分かりませんが、 Roots回路の仕様では入力電圧13V - 17Vと書かれているので、14.8v / 4cellでしょう。
放電能力が20C〜30Cのものは見つかりませんでしたが、 コネクタ形状も一致しているので、RootsはTurnigy 1300mAh 4S 45C Lipo バッテリーを使っているはずです!
1300mAhの容量で45Cであれば、1.3 * 45 = 58.5
で約60Aの電流を流せます。
ヒューズを溶断できそうです。よっしゃ。
「そのバッテリーは間違っている!」と思ったRoots回路設計者の方、コメントをお待ちしてます!
参考資料
BA7806CP - 技術資料|ローム株式会社 - ROHM Semiconductor
感想
- このペースだと電源回路だけで記事が5個くらい書けそう
- しかし執筆を続けるモチベーションを維持するためには記事を短くしよう。モチベ大事。
- Rootsの回路を参考にしているロボカッパーは、同じように作者の気持ちを考えているのだろうか。。。
- Pch MOSFETの逆電圧保護回路とロードスイッチ回路で混乱した。その話は次回の記事に。
まとめと次回予告
今回は回路分析の方針を振り返りました。 また、電源回路をEAGLEからKiCADに作り直し、逆電圧保護回路について分析しました。
次回の記事も電源回路の分析を書きます。
5/31 追記
Rootsの回路設計者からバッテリーについてコメントをもらいました。 1300mAh 4S 20C以上の物を使っているそうです。
今使ってるのは下記の3種です。
- Turnigy nano-tech 1300mAh 4S 45~90C Lipo Pack
- Turnigy 1300mAh 4S 20C Lipo Pack
- ZIPPY Compact 1300mAh 4S 25C Lipo Pack