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RoboCup SSL Rootsの回路を分析!【5:電源回路の分析 逆電圧保護回路】

こんにちは。ロボカップSSLに出場するチームRootsと雷です。

チームではソフト開発を担当していますが、このブログでは回路班の新人としてがんばります。

今回から回路図の分析が始まります。 最初に分析するのは電源回路です。

目次:

Rootsのロボットとは

Rootsのロボットに限らず、ロボカップSSLに出場しているのはこんなロボットです。

直径180 mm、高さ150 mmの大きさで、

オムニホイールで全方向に移動して、

ゴルフボールをキックするサッカーロボットです。

設計データはGitHubに公開しています。

github.com

回路分析の方針(再確認)

さて、Roots回路分析シリーズ の初回で回路分析の方針を決めました。 方針を改めて確認します。

  • 公開している回路データを分析する
  • Rootsのメンバーに質問しない
    • Roots以外の人になったつもりで頑張る
  • 最終的にオリジナル回路基板を作る

ここでのポイントは、オリジナル回路基板を作るということです。 回路基板を作るためには回路図データが必要です。 しかし、公開しているデータはEAGLEで設計されているため、KiCADユーザである私には扱いにくいです。

そこで、次のように回路分析を進めていきます。

  1. 公開している回路図をKiCADで作り直す
    • 回路図データcopy_roots_main.schができる
  2. 公開しているパターン図をKiCADで作り直す
    • パターン図データcopy_roots_main.brdができる
  3. オリジナルの回路を設計する
    • my_roots_main.schmy_roots_main.brdができる

Roots回路図のコピー品をKiCADで作ります。

ただコピーするのではなく、設計思想(作者の気持ち)を考えながら作業します。

電源回路の分析

それでは電源回路から始めましょう。

ブロック図と回路図

前の記事で作成したブロック図がこちらです。

f:id:macakasit:20200501141956p:plain
電源回路ブロック

コピーした回路図がこちらです。

f:id:macakasit:20200425150254p:plain
電源回路

f:id:macakasit:20200423230707p:plain
電源回路 外部結線

各要素を見ていきましょう。

外部結線

電源回路にはバッテリーと、4ピンコネクタが接続され、15V12V5V3.3Vの電圧が出力されます。 また、DIS_CHARGEという信号も出力されます。

バッテリー電圧は回路図に書かれていませんが、 Rootsの2017年の資料を見ると、メイン基板の電源定格は13V〜17Vと書かれています。

ロボカップSSLマシン用回路 メイン基板 · SSL-Roots/Roots_home Wiki · GitHub

4ピンコネクタにはトグルスイッチプッシュスイッチが接続されます。 それぞれ電源スイッチ放電スイッチなのですが、 実際どんな形をしているのかは機械班のブログを見てください。

kuwango.hatenablog.com

逆電圧保護回路

電源回路の中身を見ていきましょう。 入力段にはヒューズ(F201)とショットキーバリアダイオード(D201)で構成する逆電圧保護回路があります。

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逆電圧保護回路

バッテリー逆接続時に、後段のIC(レギュレータ)より先にF201とD201に電流が流れるため、ICの破壊を防いでくれます。

IC内部には静電破壊防止ダイオードが実装されている(はずな)ので、逆接続時に静電破壊防止ダイオードを経由して大電流が流れ、ICが壊れます。

よって、IC内部のダイオードよりも早くONする(電流を流す)ために、 Vfの低いショットキーバリアダイオードを選定します。

F201について

F201の型番はSF-1206F700-2です。

SF-1206F700-2データシート

データシートより、定格電流(Rated Current)が7A定格電圧(Rated Voltage)が32Vです。 抵抗値7.5 mΩです。 溶断電流については、

Fusing Time: Open within 1 min. at 200 % rated current

と書かれているので、定格電流の2倍(14A)を流すと1分後に遮断するようです。

D201について

D201の型番はCDBA340-HFです。

CDBA340-HFデータシート

絶対最大定格のうち、平均順電流(IF)が3A電圧(実効値)(V_RMS)が28Vです。 特性としてIFが3Aのときの順電圧(VF)が最大0.55Vです。

バッテリー電圧は最大17Vなので、通常使用時の定格電圧は問題ないですね。

バッテリー逆接続時はどうなるのか、パラメータの最大・最小値や温度変化等を考慮せず計算しました。

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バッテリー逆接続時の電流値計算

ヒューズが一瞬で溶断しそうな電流が流れます。 実際にはバッテリーの内部抵抗や回路パターンの抵抗等で制限されるので、1000Aも流すことはできないです。

・・・

ということはですよ。

ヒューズが溶断するかどうかはバッテリーの種類で決まるじゃないですか! いったいRootsはどんなバッテリーを使っているのでしょうか?(私は知ってるけど知らない

Rootsが使ってるバッテリーは何?

Roots公式Twitterを見てみましょう。

テーブルの奥に青色の塊がありますね、、、おそらくLiPoバッテリーでしょう

次に設計データを公開しているRoots_homeを調べます。 どこにも情報が無さそうに見えますが、、、、見つけました!

3D CAD Modelを開きます。

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バッテリー3Dモデル

TURNIGY 20-30C DISCHARGE 1300mAh と書かれていますね!おそらくバッテリーの型番でしょう。 検索してみます。

hobbyking.com

でました! 3Dモデルにはセル数が書かれていないので出力電圧は分かりませんが、 Roots回路の仕様では入力電圧13V - 17Vと書かれているので、14.8v / 4cellでしょう。

放電能力が20C〜30Cのものは見つかりませんでしたが、 コネクタ形状も一致しているので、RootsはTurnigy 1300mAh 4S 45C Lipo バッテリーを使っているはずです!

1300mAhの容量で45Cであれば、1.3 * 45 = 58.5約60Aの電流を流せます。 ヒューズを溶断できそうです。よっしゃ。

「そのバッテリーは間違っている!」と思ったRoots回路設計者の方、コメントをお待ちしてます

参考資料

BA7806CP - 技術資料|ローム株式会社 - ROHM Semiconductor

リニアレギュレータの逆電圧保護

感想

  • このペースだと電源回路だけで記事が5個くらい書けそう
  • しかし執筆を続けるモチベーションを維持するためには記事を短くしよう。モチベ大事。
  • Rootsの回路を参考にしているロボカッパーは、同じように作者の気持ちを考えているのだろうか。。。
  • Pch MOSFETの逆電圧保護回路とロードスイッチ回路で混乱した。その話は次回の記事に。

まとめと次回予告

今回は回路分析の方針を振り返りました。 また、電源回路をEAGLEからKiCADに作り直し、逆電圧保護回路について分析しました。

次回の記事も電源回路の分析を書きます。

5/31 追記

Rootsの回路設計者からバッテリーについてコメントをもらいました。 1300mAh 4S 20C以上の物を使っているそうです。

今使ってるのは下記の3種です。

  • Turnigy nano-tech 1300mAh 4S 45~90C Lipo Pack
  • Turnigy 1300mAh 4S 20C Lipo Pack
  • ZIPPY Compact 1300mAh 4S 25C Lipo Pack